通信遮断
夜になって土砂降りの雨に加えて強風が吹いていた。春の嵐というのか。明日の天気はどうだろうとスマホで検索しようとしたが、画面が消えている。電源ボタンを押しても反応がない。充電は昨夜したところなので、”電池切れ”はないはずである。壊れてしまったのか?スマホが使えない。突然、焦燥感に襲われる。固定電話から自分の携帯電話にかけてみる。「オカケニナッタデンワハツウシンノデキナイジョウタイデス」というアナウンスが流れる。初めて聞くアナウンスであった。
これは携帯電話ショップに行って相談するしかないと思い、ショップの電話番号を調べるために、ついついスマホを触ってしまう。明らかに”スマホ依存症”である。
以前に、アップル社の創設者である「スティーブン・ジョブズは息子にアイパッドを与えなかった。」というキャッチコピーに触発されて購入した「スマホ脳」という本を読んでいた。この本は、スゥエーデンの精神科医アンデッシュ・ハンセン氏の著書である。
パソコンやスマホに依存しすぎると、脳だけでなく身体に様々な影響が出ることが統計的数字を基に論じられていた。読後は、使い過ぎには注意をしなければならないと、しばらくは最低限の情報しか見ないようにしていたが、生来の健忘症からか、いつの間にかスマホを触っていた。
電車に乗っても、乗客は多くの人がスマホを見ている。喫茶店に入れば明らかに恋人同士という二人が会話もせずに互いにスマホを触っている。ある意味ゾッとする光景である。
それはさておき、翌日は休日だったので、朝から携帯ショップに出向く。待つこと30分ほど。係りの人が「復旧しました」とスマホを持ってきてくれた。原因は、システム障害だとのこと。説明を受けるがよく理解できない。
しかし、そこで思ったことは、スマホの電源は通信管理者が切ろうと思えば遮断することが可能であるということである。また電源まで切らなくてもSNS等のネットワーク通信を遮断することができる。
現に、今まさにミャンマーがそうである。ミャンマー国軍のクーデターから国軍が政権を握り、民衆によるデモ情報の拡散を防ぐために通信ネットワークを遮断している。為政者による通信遮断は、米国や中国にもあり、都合の悪いことは流せないように情報を遮断している。言論統制、暗黒政治である。
否、恐怖政治である。テレビで放映される映像は、国軍当局による自国民の虐殺である。罪なき人々や幼子がいとも簡単に射殺されている。目を覆いたくなるような悲惨なものがある。一刻も早い対処が必要である。国連をはじめ、様々な国々が遺憾の声明を発しているが具体的な動きは何ひとつ見られない。
ミャンマーとわが国は、長い歴史の中で深く関わっている。日本企業も約400社進出している。ミャンマー国軍を相手にするビジネスもあるという。国軍に利益供与している企業もあるやに聞く。そのような中で、ビール製造の事業を進めていたキリンホールディング社は「武力で政権を掌握したことは、大変遺憾であり、当社のビジネス規範や人権方針に反することから、ミャンマーから撤退する」という声明を出した。賞賛に値する行動であると思う。こういうときこそわが国の為政者の真価が問われるものだと思う。官民そろって通信遮断の無い世界を構築して欲しいと思うものである。
令和3年4月1日