2024年9月「新・ガクモンのすすめ」
大型台風の日本列島縦断を最後に8月は、怒涛のように過ぎていった。私自身も、目まぐるしい8月であった。夏季休暇はほとんど学習に明け暮れ、出かけることも儘ならなかった。なぜなら、仕事もほぼフルタイムでこなしながら、学校から出される課題の消化に追われていたからである。
以前にも若干お伝えしたが、今年4月から大学の門をたたいた。書類を作成したり、人さまの相談に応じたりという職業を生業にしてきたが、もう少し、読解力や文章力をつけたいと常々感じていた。また、若い世代の考えかたや処し方も知りたかったことから、大学で勉強することを選択した。通信制の大学であれば、仕事と両立できるし、融通もきくだろうと安易に進学を決めた。調べてみると、京都芸術大学芸術学科に文芸コースなるものがあり、私が望む「読解力や文章作成力の強化」等々の授業内容である。早速、3年次編入の手続き等を終えて入学が許可された。
昔の経験から、授業は前期後期に分かれて夏休みもあると勝手に思っていたが、通信制は、1年を3か月ごとの4クールに分け、3か月の中でいくつかの科目を消化するという仕組みであった。従って、長期休暇というものは存在しない。休日はすべて学習にあてないと単位が取れず、進級も卒業もできないのである。しかも専門科目は別として、一応、芸術大学なので日本をはじめとして世界の芸術や文学も学ばなければいけないのである。最初は、いまさら「イギリス文学」「フランス文学」「日本文学」かと思ったが、やり始めると面白い。『エマ』や『居酒屋』そして『枕草子』の中にも現代につながる発見がいっぱいある。これらは、今までの人生でカスリもしなかった領域である。
150年ほど前に福沢諭吉が『学問のす々め』のなかで、実学(読み、書き、算盤等々)を学べと言っている。それを受けたわけではないが、実学ばかりを勉強してきた私には、文芸はまったく“蚊帳の外“であった。しかし、中国明朝時代の文学が、芥川龍之介や谷崎潤一郎に大きく影響を与えたことを知ることは大きな収穫であった。もっと早く知るべきだと思った。「損をした」と思った。未知の領域が拡がっている。それも無限と言えるほどに……。
文芸の世界は、インドからアジアにつながり、ヨーロッパから世界につながって、日本も含み世界中が「知のネットワーク」を形成している。このネットワークに触れることは、ワクワクドキドキするものである。実学はもちろん大切であるが、文芸に触れることはあらためて「人生の意味」を教えてくれることに気づいた。そこで、読者諸賢には、私のようにならないためにも『新・ガクモンのすすめ』を提唱したい。
2024年9月1日
photo by kishimoto