【理事長ブログ】2019年3月「流氷の天使」

 庭の沈丁花の花が咲きだし、河津桜も本番間近である。桜花の蜜を吸いに鶯が来ている。
“寒い寒い“と言っても確実に春は、暖かい東風に乗り堂々と近づいてきている。日没も遅くなった代わりに、街の灯りが恋しくなる季節でもある。風邪気味で体調の悪かった冬には、出かけたくもないが、こう暖かくなってくると一軒つい一軒と暖簾をくぐりたくなる。啓蟄も近いからか、虫が這い出るように動き始める。

休日の薄暮というのか微かな夕陽の名残のある時間に暖簾をくぐる。馴染みの寿司屋である。この店の大将は頑固である。仕入はすべて自分の眼と舌で決める。美味しい食材があれば、何処にでも足を延ばす。酒の銘柄までうるさい。氷を作る水までこだわり、わざわざ長野まで水を求めに行く。若い頃は、見習いの板前を雇っていたが、今は夫婦ふたりで切り盛りしている。だから、カウンターに構えても、他のお客さんの注文で忙しくなかなか握ってもらえない。やっと頼んだ寿司が出てきたときには、余計に美味く感じる。これも営業戦略なのかもしれない。

しかも、常連客が大将にも酒をすすめる。その酒を旨そうにすすりながら、魚をさばく。酒を飲みながらも手は休まずに次々と注文に応えていく。酒を飲みながら仕事ができる商売なんてそう他にはないだろう。食材の吟味からブログ発信まですべて遊びながらやっているようにみえる。隣の芝生は良く見えると言うが、私のような仕事から比べると、楽しそうである。私の仕事は、どちらかと言えば企業相手のことが多く、神経を使うことが多い。

大将の声が聞こえる「兄貴、何を言ってんだい、俺の仕事は食の仕事だ。命にかかわる仕事だ。食品衛生にどれだけ神経使っているか。結構大変なんだぜ。」
そういえばこのコラムも会長時代と併せて八年余りになる。多くの方が登場したが、やっと大将の出番である。。大将は私の弟である。

兄弟で全く違う職業を選択したが、共通することは、様々な人がお客さんであるということである。様々な人間模様が見えて面白い。この店で知り合いになって私の事務所のお客さんになってくれた会社もある。仕事は、どこでどんな人に会い、どう展開するか?誠に面白いものがある。私のコラムを読んで仲良くなった方もいる。そんなことを思っていると大将が“今日の白魚は、特別限定だよ。袋井の太田川河口で採れたもの”と・・・。つい“握って”と頼んでしまう。しかも、兄であろうがビタ一文(既に死語か?)代金をまけてはくれない。珍しいネタを“旨いよ美味いよ!”とすすめてくる。

続けてこれはどう?と出してくれたのが上の写真“クリオネ”である。オホーツク海の流氷の下に生息するという巻貝の一種である。どんな味と聞くと寿司ネタではないとのこと。入手ルートは企業秘密という。話を聞くと別名「流氷の天使」とも「氷の妖精」とも言う。見ているとスタジオジブリ的な気持ち(そんなものがあったか?)になる。優雅な泳ぎである。どんなに仕事がハードでもこのような時間は持ちたいものである。大将ありがとう!それではまた、来月4月のコラム「白木蓮の天使」でお会いしましょう。

平成31年3月1日

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