雄踏歌舞伎「万人講」講演を鑑賞して

600人の会場がほぼ観客で埋め尽くされている。令和2年1月19日、日曜日。浜松市雄踏文化センター大ホール。毎年1月第3日曜日に講演が開催され、今年が第31回。
雄踏町の方達のパワーを感じずにいられない。
午前10時30分開演「寿式三番叟」「和太鼓」「恋飛脚大和往来 封印切の場」「三人吉三巴白波 大川端庚申塚の場」「恋飛脚大和往来 新口村の場」と続く。途中、昼食を食べるための幕間が設けられ、会場から一斉にロビーへ観客が移動する。たちまちロビーの机と椅子は満席となり、各自持参のお弁当を食す。中でも助六寿司を口に運んでいる方が多い。

 昔からこのようにこの歌舞伎を楽しみに村の人々が集まり歌舞伎を楽しんでいたのであろう。それを考えると歌舞伎保存会の方には、これからも是非頑張って頂きたいと思う。この雄踏歌舞伎は、浜松市雄踏地域の村祭りの余興として招いた歌舞伎一座から芝居を教わった村人達が「講」を組織し、芝居を奉納したことが始まり。しかし、1952年の舞台を最後に途絶え、上演場所であった「喜楽座」も取り壊された。その後1989年雄踏文化センターの完成により歌舞伎の上演場所が確保され、「万人講」の復活が可能となり活動が始まったとのこと。

「講」とは何かと調べてみれば、
神仏に参詣したり、社寺に寄付したりすることを目的とする人々が集まって組織する団体。そして「万人講」としたのは、男女問わず誰でもが参加できる歌舞伎の舞台を創るため。今回の配役も主演の忠兵衛役は22歳の素敵な女性でした。

今後の活動として、各地域の歌舞伎保存会合同公演があるそうです。また、海外へ寿式三番叟を持っていこうという話も・・・
日本文化芸術の素晴らしさを絶やしてほしくないと、常々考えます。日本人より海外の方のほうが日本の良さ、日本の文化芸術を愛してくれているのではないかと・・・

 今は無き「喜楽座」で使っていたという幕は、ロビーに飾られ昔の芝居小屋を思わせるようでした。「喜楽座」を一度見てみたかったという思いがよぎる。昔の芝居小屋はどんどん取り壊され現代風に姿を変えていく。東京の歌舞伎座、名古屋の御園座がすっかり近代的になってしまったことをとても残念に思う。建物を残すのは大層大変だとは思うが、昔の舞台だからこそ、日本文化価値がある芝居もあるのではないか・・・と。

「喜楽座」がなくなってしまった今、「浜松地域遺産」認定ふる里芸能「万人講」は残り続けていただきたいと切に願います。


原田敦代

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Previous article

東雲の空

Next article

福は内、鬼も内