福は内、鬼も内

上弦の月にはまだ至らないが、そうかと言って三日月と言うには少しふっくらした月が浮かんでいる。暖冬の2月であるが、夜はそれなりに冷える。家までの坂道の向こうに夜空が広がる。ブルっと身震いする寒さである。風の冷たさに思わず立ち止まって空を見上げた。

夜空を仰ぐのは久しぶりのことであった。なぜ夜空を見上げることを忘れていたのか。毎年11月になると東の空に輝く冬の大三角形オリオン座を必ず眺め、冬が近いことを感じ、そのままプレアデス星団スバルが見えるかどうかを視力検査としていた。
星空を見ることを忘れるくらい忙しかったのか。いや、そんなことはない。多少体調の悪い時もあったが、休むこともなく無事息災でいられる。

忘れていたことに少し悔しい気持ちを抱えながら、オリオンを探す。南の空に大三角形が見えた。そのまま北西方向に眼をやると、スバルも見えた。が、心なしか霞んでいる。視力が落ちている。まあ、歳だから・・・。最近はやたらと“歳だから”と片付けてしまう傾向がある。心の中で「まだまだ」と言いながらも、やっぱり“歳だから”の繰り返しである。こうして人は老いてゆくのであろう。冷たい風がそういう想いにさせるのであろうか。

後ろから車のヘッドライトが照らし出す。我に返る。星空が遠のいてゆく。マスクの息で眼鏡が曇る。マスクはあまり好きではないのだが、今年に入っての新型コロナウィルスの影響で、始終着けている。とどまることを知らない感染力で、世界中に広がりつつある。先月このブログを書いている頃は、想像だにしなかったことである。

今年は、平穏に過ぎていくことを願った元旦から、ひと月の間に米国によるイランミサイル攻撃。一触即発の危機は回避されたが、火種はくすぶり続けている。加えて前述のウィルス感染である。ワールドワイドになっている現代であるからこそ、拡散の速度が速い。どちらにしても株価にまで大きな影響が出ている。
本当の意味で今年がどのような年になっていくのか?誰にも予想はつかない。予想はつかないが、日々は刻々と過ぎ季節は巡りゆく。

暖冬のせいか、梅や寒桜も一足早く咲いている。あっという間に一月は過ぎ去り、すでに二月である。節分も近い。
「福は内、鬼は外」と豆まきをするお宅も少なくなってきているが、我が家は欠かさずに豆まきをしている。これまでは、「福は内、鬼は外」とやってきたが、考えてみれば“鬼”は強いものであり、“悪霊を追い払い、邪を治める”とも言われている。鬼ばかりを悪者にするのもおかしいものである。ウィルスの邪を治めていただこう。声高にジェンダー差別反対が叫ばれている昨今である。
鬼さんも差別しないで、今年は「福は内、鬼も内」といこうではないか! 


令和2年2月1日
岸本敏和

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