バレンタインデーによせて

早いもので、暦の上では春。2月14日はバレンタインデーです。
日本では独特な風習として発展したバレンタインデーですが、近年は、”チョコレートハラスメント”、”バレンタインハラスメント”といった問題になることもあるほど。この風習を「強要」と感じる人、勘違いから別のハラスメントに発展させてしまったりする人等、多様な価値観があり、捉え方は人それぞれです。とはいえ、この時期、店頭に並ぶチョコレートをあれこれ物色するのは、年に一度の楽しみでもあります。

色とりどりのチョコレートの中には、フェアトレードのマークの付いた製品もあります。私が普段スーパーで購入する商品より少し高価です。皆さんも既にご存じの通り、フェアトレード製品を購入することで、間接的に開発途上国の生産者をサポートすることができ、これらの国が抱える問題をなくすことにも繋がるしくみが作られています。

“開発途上国が抱える深刻な問題の1つに、児童労働があります。その数は約1億5,200万人、実に世界の子どもの10人に1人にあたります。その温床の一つとして明らかになっているのが、カカオ豆の農園の状況です。児童労働が起こる要因には、社会の慣習や伝統、文化的背景、教育制度や福祉制度の未整備もありますが、多くの場合、経済的「貧困」がほとんどだと言われています。”
「FAIRTRADE JAPAN HPより」

例えば、チョコレートが国際フェアトレード認証を受けるには、
「生産者の対象地域」 「生産者基準」 「トレーダー基準」 「産品基準」
といった基準を クリアする必要がありますが、人を雇用して生産活動をする組織向けの「生産者基準」のうち「労働条件」を見てみますと、次のような基準がありました。

“Your company does not discriminate, support or tolerate discrimination on the basis of race, colour, gender, sexual orientation, disability, marital status, HIV/AIDS status, age, religion, political opinion, union or workers’ representative bodies, national extraction or social origin, . . . ”
「FAIRTRADE INTERNATIONAL HPより」


人種、肌の色、性別、性的指向、障害、既婚・未婚、HIV / AIDSの感染の有無、年齢、宗教、政治的意見、所属する組合または労働者代表組織、生まれた国または社会的起源による差別をしない・・・
(筆者訳)

近年、日本でも社会の多様性が論じられ、昨年6月にはハラスメント防止法が施行されたところですが、この労働条件を見て目からうろこが落ちる思いでした。

『発展途上国の人々が、労働に対する正当な対価を得、やりがいと生きがいを持って働くことができるよう、無力だけれど、このチョコレートを買うことでその役に立てたら・・・』

などと思っていた私は、

『この基準に適合した発展途上国の生産者組織は、既に日本を上回る労働環境を実現しているではないか!?』

と気づいたのです。

社会的背景が大きく違う国ですから、単純に比較できる訳ではありません。しかし、日本の雇用環境にある様々な差別の現実をこの農園で働く女性に話したら、「日本で働きたい」と思ってもらえるでしょうか

私達も、フェアトレードの生産者基準をクリアできよう、また、支援している人々に『日本は素敵な国だ』と思ってもうらえるよう、自分の周りにある差別と向き合ってみませんか。

まずは、
自分の無知と無関心を克服すること
(私自身、国際フェアトレード認証の基準を調べたこともありませんでした)

自分と違う価値観、違う行動を取る人を排除するのではなく、認め、尊重すること
(手始めに、冒頭のバレンタインデーの風習に苦しむ人の気持ちを、我が事として考えてみます)

自分と違う境遇にある人の立場に立って考え、認め合う。
こんな社会が実現できれば、様々な差別は自然に過去の遺物になっていくのかもしれません。

今年のバレンタインデーは、フェアトレードのチョコを、身近な人たちとゆっくり味わう日にしようと思います。
ソーシャルディスタンスを取りながら・・・

アスカ総合事務所 伊藤

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