2022年7月「視点」
先月の終盤から梅雨空がなかったかのように突然夏がやってきた。そんな中流れる汗をぬぐいながら書棚の整理をしていた。こういうとき私はラジオを聴きながら作業をするのが常となっている。懐かしい書籍が次々と出てきた。その中でも当時所属していた「日本青年会議所の機関誌”50億”」が30余年の時空を越えて眼の前に現れた。
発行日付をみれば1985年8月となっている。私も青年と言われた時代である(笑)。地球人口が50億人を越えたころである。それから幾星霜、現在は78.5億人という状況である。何げなく聞いていたラジオから「・・・・ gone with the wind」という声が聞こえた。“gone with the wind”と言えば「風と共に去りぬ」である。マーガレット・ミッチェルの名作である。
確か我が家の書棚にもあったはずである。探そうとしたところで、ラジオの声の主は、ロシアのプーチン大統領であった。彼は繰り返し言った。「The old world order is gone with the wind」直訳すれば「古い世界の秩序は、風と共に去りぬ」であろうか?プーチン大統領はいわゆる西側諸国でつくるG7先進国首脳会議(古い世界の秩序)に対して、世界をリードする“新しい秩序G8”の結成が必要だと言っている。
”新しい秩序G8”とは「ロシア、中国、インド、ブラジル、インドネシア、メキシコ、イラン、トルコ」の8か国が連携して、経済・軍事面で世界をリードしようという主張であった。 作業の手が止まる。先ほどの世界人口を思い出し、それぞれの人口を比べてみた。G7の構成国の総人口は7億7千5百万人。およそ世界人口の10%である。片方の新G8の構成国の総人口は、37億7千万人である。世界人口の約50%を占めている。両者のGDPを比べてみても、25%近く新G8の方が多いことがわかった。
これは何を示唆しているのだろうか?将来の勢力分布はどうなるのか?我が国の立ち位置は?額に汗がにじむ。プーチン大統領のスピーチは、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた「国際経済フォーラム」でのことであった。このフォーラムは、1997年からロシアで開催されている経済・ビジネス分野の国際会議である。ラジオではロシアのウクライナ侵攻を非難して多くの国が参加を見合わせたと言っていたが、127か国が参加。昨年の141か国に対して、今年は1割程度の減少である。
ロシアは経済的に孤立状態に陥っていると私達はニュース等で聞いているが、果たして本当にそうなのだろうか?世界の国の数は196か国である。そのうちの127か国が参加ということは世界の3分の2の国が参加していることになる。
確かにロシアのウクライナへの攻撃は、非人道的であり決して許されることではない。ロシアは情報統制されていて非人道的な行為は、国民に報道されていないというが、私達の得る情報も本当に正確なものだろうか?
私達は子供のときから、日本列島が真ん中に描かれた世界地図を見て育ってきた。
しかし、約80億人の住む地球は丸い。視点を変えてみれば、日本は東のはずれにある辺境にみえる。大陸の人達からはどう見えるか?邪魔な存在か?攻撃並びに防衛拠点に最適な弓なり形の列島か?それとも貿易物流の一大拠点となり得るのか?・・・。
かくして、書棚の片づけは後日に持ち越しとなった。
Photo by:T-kishimoto
令和4年7月1日