2023年12月「夜が明けたら」
♪夜が明けたら一番早い汽車に乗るから切符を用意してちょうだい♪
ある会議で話をしていた。話の内容とは全然関係のないメロディが頭の中に流れてきた。どうして、話題と全く関係のない、メロディが流れてきたのか。冒頭に掲げたものは、学生の頃に聴いた「夜が明けたら」というタイトルで浅川マキという歌手がが暗い雰囲気で唄っていたものだ。(ほとんどの人が知らないと思う)
会議の後も、そのメロディが一日中頭の中を流れている。こうしたことはたまにはあることだが、こんなに古い記憶の曲は珍しいことである。50年も前の曲である。
続けて流れる歌詞は♪今夜でこの街とはさよならね、わりといい街だったけどね♪
なぜ、この曲が頭の中に流れたのかは、このフレーズであることに気がついた。
頭の中は「街」を「会社」に置き換えているのである。
会議の中で「退職代行サービス」の話があった。そこからこの曲が浮かんだのであろう。最近、会社を退職しようとする労働者が、自分の勤務する会社に退職の意思表示をする場合。自身で伝えることを避け、退職代行の業者等に依頼するケースが増えているという。
自分の進退について、費用を負担し意思を伝えるという。私達の世代では考えられないことである。代行業者から社員の退職を伝えられた会社としても、今まで一緒に働いてきた本人からならまだしも、水知らぬ人から一方的に退職の意思表示をされて困惑気味である。退職の慰留もできないし、「お疲れ様でした」ということもできない。わが社は、そんなに風通しの悪い会社なのか・・・。と余分なことまで考えてしまう。と。
確かに、民法第627条には「期間の定めのない雇用契約について各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」となっているから、いつでも退職の意思表示はできるのである。もちろん退職代行の業者は、依頼人から委任状をとり当事者代理となっているのであろうが、退職の際には円満退社ばかりでなく、トラブルに発展することもあるはずである。そうした場合に、その代理行為は非弁活動とはならないか。
あらぬ心配も起きてくる。世の中が進歩?すればするほど思いもよらない仕事が生まれてくる。生成AIが進歩すればその分、様々な仕事が減少するという説がある。そういう意味であれば「退職代行」という新ビジネスも意味があるのかとも思う。
しかし、仕事の絶対数は減少するはずである。そうなれば必然的に「退職代行」も成立しなくなる。また、仕事が減少すれば持たざる者と持たない者の格差が開く。格差を埋めるかたちでのベーシックインカムが必要になる。しかし、ベーシックインカムが人々に充実感をもたらすのか。人は労働することによって生きがいを見出すのか。仕事をしない方が幸せなのか。話が渦を巻いて流れていく。
この稿を書きながら夜も更けてきた。私の頭はそこで思考を止めてしまう。
夜が明けたら、明日はあしたの風が吹くだろう。(文中:敬称略)
2023年12月1日
Photo by kishimoto