2026年3月『アスカ塾』
二十年ほど前、私は中小企業の経営者数名を対象に、経営の基礎や法規制、そして経営者としての姿勢を共に考える勉強会を主宰していた。日々の実務に追われがちな経営者こそ、立ち止まり、学び、視野を広げる時間が必要であるという思いから始めたものである。しかし、私が業界の役員などをしている間に、時間が取れなくなり、いつしか自然消滅のような形で幕を閉じた。
ところが数年前、その勉強会を再び復活させる機会が訪れた。当時の参加者から「もう一度あの場をつくってほしい」と声をかけられたのである。経営環境が複雑化し、法規制も高度化する中で、経営者が孤独に悩みを抱え込む場面はむしろ増えている。ならば、再び学びの場を整えることは意義があると考え、再開を決意した。
現在は十余名の経営者を対象に、マンツーマン形式でのレクチャーを中心に進めている。私の作成した教材資料に添いつつも、実態は「対話の場」である。経営者が抱える悩みは、数字や制度だけでは解決できない。人の問題、組織の問題、そして経営者自身の生き方に関わる問題が複雑に絡み合う。だからこそ、私は一方的に教えるのではなく、ディスカッションを通じて思考を深めてもらうことを重視している。経営者が自らの言葉で語り、整理し、気づきを得る。その積み重ねが、企業の力となり、ひいては地域の力となると信じている。
さらに二年ほど前からは、受講生同士の交流を目的に、2ヵ月に一度「アスカ会」と名付けた交流会を開催している。マンツーマンの学びは深いが、横のつながりが生まれにくいという課題があった。そこで、異なる業種の経営者が集まり、互いの経験や悩みを共有する場を設けたのである。
このアスカ会が予想以上に活発である。初対面同士が遠慮がちに名刺交換をしていた頃が懐かしく思えるほど、今では率直な意見交換が行われている。時には厳しい指摘も飛び交うが、それを受け止め、次の行動につなげようとする姿勢が見られる。経営者同士が切磋琢磨する姿は、私にとっても大きな励みである。
また、交流の中から新たなビジネスが生まれる例も出てきた。単なる社交の場ではなく、実際の事業連携に発展していることは、私として非常に嬉しいことである。学びが実務に結びつき、企業の成長につながる。これこそ、勉強会を続けてきた意義であると感じている。
経営者は孤独であると言われる。しかし、孤独である必要はない。学び合い、語り合い、支え合う仲間がいれば、経営はより豊かで力強いものになる。アスカ総合事務所として、これからも経営者の伴走者として、学びの場を育てていきたいと考えている。そのためには、私自身が先行して勉強しなければならない。こうしている間にも学ぶべきことは増えていく。歳をとっているヒマはない。
2026年3月1日

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