2022年9月「地球見」

 まだまだ少年の頃だった。8月の日差しが照り付ける中、長い長い行列に並んでいた。4時間ほど並んだときに、係りの人が「あと4時間で中に入れます」と声をかけてきた。                           そこで、私は行列から抜け出した。辛抱強くない私は”月の石”をみることを諦めたのである。50数年前の大阪万博のときであった。                                      

 米国のアポロ宇宙船が持ち帰った”月の石”を見るために行列に並んでいたのであった。私が離脱した後も、ひとりの友達は並び続け、”月の石”を見てきた。感想は「どうってことなかった」だった。その頃、アポロ宇宙船が次々と月面に着陸し、宇宙飛行士が月面を歩く姿のテレビ放映に、釘付けになっていた。

「人類は30年後には月に居住するだろう」と解説者は話していた。しかし、いつの間にかアポロ計画は終了し、月面着陸のことなどとうに忘れていた。

 ところが今になって50年の歳月を超え、月面着陸の話が出てきた。アルミテス計画という。先月下旬のロケット打ち上げがエンジントラブルで延期になったが再び月を目指すという。月面に居住施設を作り、資源開発や他の惑星へのゲートウェイ建設が目的だという。

人類は新天地を目指し、荒野を歩き波涛を越えて文明を進歩させてきた。しかし、我々の暮らす地球はどうなったのか?世界各地で大干ばつ、大洪水、大雨が頻発し多くの人達が困窮している。

 地質学の世界でも最近新しい視点が指摘されている。地球が誕生して46億年、地質学的にいうと、古生代、中生代、ジュラ紀、白亜紀、そして現在が完新世であるが、最近完新世が終わり新しい時代になったという。それを”人新世”という。本来、地層の中は、自然界のものばかりであったが最近は、アスファルト・コンクリート・プラスチックの層が形成されており、地域によっては自然界に絶対存在しない放射能プルトニウムが堆積されているという。

 つまり人類が生み出した新地層を”人新世”と呼ぶ。今から1万年後の人類が地質調査をしたときに、”人新世”の地層を見て何を思うか?地球の環境が問われる中、それでも人類は月を目指すのか?そこまで考えて私は思考停止となった。            

 難しい話はさておき、今月は中秋の名月を迎える9月である。中秋の名月の日は暦で決まっており旧暦の8月15日である。中秋の名月というと満月を想像するかもしれないが、月の周期から必ずしも満月にはならない。むしろ満月になる確率は低い。今年の中秋の名月は9月10日。何と満月である。来年は9月29日が中秋の名月であり、来年も満月である。しかし、その後は、2030年の9月まで巡ってこない。是非とも、今年の中秋の名月は楽しみたいものである。

 それにしても2030年には、月のゲートウェイから人類は「地球見」をしているのであろうか。

令和4年9月1日

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