2023年4月「1952年」

今年の春はその訪れが早い。3月中旬から汗ばむことが多くなった。気の早い私は、冬物をしまい、夏物を引っ張り出す。お気に入りのTシャツである。表から裏面にかけて私の中のヒーローが描かれている。背中の右隅には、英文が書かれている。

 訳してみると、「2003年科学省の天馬博士は、技術の粋を集めてロボットを創った。そのロボットの名前は”アストロボーイ”である」。欧米ではアストロボーイと呼ぶが日本では鉄腕アトムである。

 鉄腕アトムは、子供の頃のヒーローであった。同じころ流行った”鉄人28号”はリモコンで動くロボットであったが、鉄腕アトムは自律型のしかも人工知能を搭載したロボットで自分の意思で動く正義の味方であった。物語の中では2003年の生まれだが、実際は1952年4月7日に月刊少年雑誌「少年」に掲載されたのが始まりであった。70年も前に手塚治虫は、10万馬力の原子力エンジンを内蔵し、空も飛べる。しかも人を守るロボットを描いていた。

 テーマソングには♪空を越えてラララ星の彼方~心優し、科学の子~今日もアトム~人間守って♪とある。いまでも空で歌える。あらためて歌詞をみていると作詞「谷川俊太郎」とある。驚きと共に新鮮さを感じた。あの「二十億光年の孤独」で有名な詩人の谷川俊太郎である。中学生の頃、この詩を初めて読んだ時の衝撃は今もって忘れられない。その冒頭を記載する。

「人類は小さな球の上で、眠り起きそして働き、ときどき火星に仲間を欲しがったりする。火星人は小さな球の上で、何をしてるか僕は知らない。(略)しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする。それはまったくたしかなことだ。」

 遠いところにどんな生命がいるかわからないが、広大な宇宙の中で隣の星である火星に姿かたちは違えども、生物がいるなら友達になりたい。火星の生物も地球人に友達になって欲しいと思っている。というように私は解釈した。今でこそ多様性・ダイバーシティ&インクルージョンということが言われているが、この詩は鉄腕アトムと同じ1952年に発表されたものである。先人たちの未来を見る英知に驚くばかりである。どんな生物かはわからないが仲間になりたい。遠く離れていても隣人だから仲間になりたい。

 ロシアとウクライナは地続きの最も近い隣国である。この「二十億光年の孤独」を是非にも読んでいただきたいものである。

 鉄腕アトムと同じ1952年生まれのプーチン氏に

 (文中、敬称略)

2023年4月1日

photo by kishimoto

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