師走の一日

朝起きて、夜のうちに溜まった枯葉を掃く。頬を撫ぜる風が冷たい。息が白い。指先が悴む。ふと気づく。庭の片隅に石蕗が咲いている。植えたものではない。どこからか飛んできて自生したのであろう。それも白い椿の木に絡んで咲いている。

石蕗の花言葉は何だろう。掃く手を止めてポケットからスマフォを出して調べる。便利なものである。ドラえもんの“コンピュータペンシル”みたいなものだ。花言葉は、「先を見通す能力」とある。

朝っぱらからそう来たか!明日のことさえ判らないのに、石蕗は「先を見通す能力」が花言葉だという。我々の事業はこれからどう変化していく?社会は経済はどう変わる?AIが凌駕していくのであろうか?コンピュータペンシルが実現しているのだから“もしもボックス”や“四次元ポケット”も出来るかもしれない・・・。まだ、よく目覚めていないようだ。

昼過ぎ、予報は晴れだったのに、俄かに雲が多くなり霙が降る。間欠ワイパーが間延びしたようにフロントガラスを拭っている。事業承継の講師をした帰り道。我が国の中小企業の数が減っている。ここ数年で420万社あった中小企業が370万社と急激に減少している。原因はいろいろあるが、いちばん多い理由は、後継者がいないということである。

言うまでもないが我が国の産業は、大手メーカーの下支えとして中小企業が担っている。技術立国として繁栄してきたその根底には、中小企業のたゆまない努力があったからである。

以前は、後継者は経営者の身内が多かったが、最近は少子化が影響してか、従業員や外部からの後継者が増えている傾向にある。いずれにしても国策として事業承継のしやすい制度作りが急務であろう。
雲の切れ目から陽が指し始めた。どうやら俄雨のようであった。

今日の天気のように、雲間が切れて中小企業にも陽があたる政策を先月誕生した政権に期待したい。
一日の仕事を終え、家に帰る。玄関を開ける前に、暫し佇み夜空を仰ぐ。天空に、今にも満月になりそうな月が明るい。こんなに明るいと一番好きな冬の夜空の星々が見えない。

特に天頂から若干南側を移動していく昴座星雲が見えない。夜気が冷え込んでくる。ぶるっと身震いする。そんな中、夜空を見上げるのが好きだ。昼間の喧騒を忘れ、心は悠久の彼方に飛んでいく。

子供の頃から、冬の夜空が好きだった。だからと言って、夜空を彩る星に詳しいわけでもない。一時期は天体望遠鏡を買い込んで、眺めたりしたこともあったが、生来の飽き性から直に望遠鏡は埃を被っていた。ただただ夜空を眺めるのがいい。綺麗なもの美しいものは、ただただ眺めるのがいい。だから君を眺めていよう。

こうして、一日が終わり、また一年が過ぎてゆく。いろいろあった一年ではあるが、何とか息災で過ごすことができた。周りの全てにただただ感謝である。夜風も出てきたので、家に入ろう。では、また来年!
平成29年12月1日

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