「クラウド」

 新しい年の風を感じようと、外に出る。寒い! 真冬の雲が、青空の中を急ぎ足で流れていく。続いて雪雲らしい雲も近づいて来ている。天気予報は?と、ポケットの中からスマホを出して悴んだ指で検索。雪にはならないらしい。ふと耳をすませばどこからか、自転車がブレーキをかけたような”キッキッ”という音が聞こえる。聞き方によっては、小さなハンマーで石を叩くような”カンカン”とも聞き取れる。

 音の聞こえる方向に眼をやれば、フェンスの上に見たことのない鳥が止まっている。どうやら音の主は、この鳥の鳴き声のようだ。そっと近づいてスマホを向ける。何と言う名前の鳥だろう?スマホのグーグルレンズというアプリで検索する。”ジョウビタキ”という名の冬鳥であるという。シベリアやバイカル湖付近で繁殖し、日本に越冬のため渡ってくるという。幸運を運ぶ鳥ともある。スマホのシャッターを押してから、この間十数秒。何とも便利なものである。図鑑類等が売れなくなるのではと・・。余計な心配が頭をよぎる。

 便利な時代である。何もかもが高速化し、手軽にしかも安価で利用できる時代である。私の仕事のひとつに書類作成という業務がある。開業当初は、和文タイプライターで一文字一文字ガシャガシャと打っていた。やがてワープロに変わり、パソコンとなってきた。その移り変りは速いものだと思っていたが、現在の進化に比べれば、結構のんびりした時代であったように思う。

 昨年は、書類作成のために新しいシステムを入れた。管理はすべてクラウド上である。今までは、「書類を作成する。お客様に送る。確認していただく。修正すべき点は修正する。」というようなやりとりが続いていたが、今やクラウド上でお客様と情報を共有しながら作業を進めることができる。改訂履歴も新旧対照表も同時進行でできてしまう。フロッピーディスクという言葉は今や死語であるが、USBメモリーという言葉も近い将来絶滅してしまうのだろう。

 新しく入れたシステムも目まぐるしく更新されていき、操作方法がすぐにわからなくなってしまう。同世代の人たちに比べてデジタルスキルは持っているつもりではあったが、長足の進歩にはお手上げである。キーボードを打つ手が止まり、その都度、デジタルに明るい職員に尋ねること数回「いい加減に覚えてくださいよ」という逆パワハラを受けるも、彼曰く「何回も同じことを聞いてくるのもパワハラですよ」と追い打ちをかけてくる。

今まで蓄積してきた知識・スキルは、あっという間に錆びついていく。これからはクラウドを自由自在に扱えるかがビジネスの主戦場になると思う。しかし、私はクラウドどころかスマホでさえ機能の一割も使えていない。仕事はもちろんであるが社会の中で生きていく上でも、デジタルデバイドがそのまま人生の格差につながってしまうような時代である。

「私はアナログ人間だから・・・」という言い訳は、ビジネスの世界では通用しない。しかしながら、いまさら・・という逃げ口上が頭をかすめていく。かくして私は漂流するデジタル難民と化していくのだろうか?

 英国のルチアーノ・フロリディという学者が「人間はコンピュータを必要としているが、コンピュータは人間を必要としていない。クラウドは人間がコンピュータの輪の中から出て行く初めての試みである」と。クラウドとはそんな世界なのか! それならば、遅ればせながら今年はクラウド元年として、クラウドの世界をのぞいてみようと思う。まだまだ、デジタル難民になるわけにはいかない。これを一年の計とし、今年も頑張っていこうと思う。

令和4年1月1日

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