2023年6月「やばい」

 梅雨が早い。今年は例年よりも早く5月の終わりには梅雨が訪れてきた。雨の日はなんとなく落ち着いて心静まるときもあるが、雨空が続くと鬱陶しくもなってくる。鬱陶しいと言えば、最近、何気なくテレビを見ていて感じたことがある。ミツバチの養蜂の模様を実況していた。女王バチを目指して数千匹のミツバチが集まってくる様子を、どんなシーンのときも「やばい、やばい、やばい」という表現でアナウンスしていた。あまりにも「やばい」が多発していたことから、他の出演者も「やばいが多いですね」と暗に指摘していたが、それでも「やばい」が続いていた。その「やばい」を鬱陶しいと感じたのは歳のせいか?

 「やばい」という表現を”凄い”という意味にも使うということは知っていたが、私の中では、「やばい」はあくまでも”危険” ”ピンチ” ”危うい”等であるが、今は様々なシーンで「やばい」を使うらしい。可愛い、綺麗、凄い、楽しい、嬉しい、悲しい、面白い、格好いい、等々も「やばい」の表現であるとのこと。言語は、どんな国の言葉でも変化していくものであるが。日本語ほど変化の激しい言語は無いのではないかと思う。

 江戸時代の人が、現在の日本語を聞いたら半分くらいしか理解できないかとも思う。                                                               否、それ以上に理解できないかもしれない。昭和生まれの私が「やばい」に手こずっているのだから。

 人間は、頭の中で理解していくときに必ず言語を用いている。語彙が多くなればなるほど考え方も多岐にわたる。しかし、「やばい」の表現だけで良いことも悪いことも使い分ける頭脳というのは退化しているのか進歩しているのか私にはわからないことである。こんなことを考えながら事務所の若いスタッフに聞いてみると、最近は「やばい」はもうすでに古い表現で「えぐい」が最近は使われているという。

 増々、わからなくなってくるが、わずか3文字で様々な感情を表現できる言語というのは、ある意味すごい言葉かもしれない。いやいや”すごい言葉”じゃなくて、それこそチョー「やばい言葉」かもしれない。

 話を冒頭に戻そう!梅雨と言えば私の頭の中に”紫陽花”が浮かぶ。この写真は庭に咲いたガクアジサイであり、その名前を”銀河”という。梅雨空の下に”銀河”。鬱陶しさを忘れさせてくれる名前である。遥か天空で輝く銀河、天の川を連想させる”やばい名前”である。

2023年6月1日

photo by kishimoto