2024年4月「桜咲く頃」

 人には「やってみたら!やらずに後悔するより、やって後悔するほうが・・・」という科白を何人もの人たちに言ってきた。しかし、思い返してみれば自分自身がやってきたのか?挑戦してきたのか?甚だ疑問である。

 26歳で今の事務所を開業し、今年で44年目である。人は「若いのによく挑戦したね」と言うが、「挑戦」などという気はまるでなかった。行き掛り上、開業したようなものである。開業して、5年で事務所を建てた。その後また5年で新たな事務所を建てた。これも「すごい挑戦だったね」と言われたが、成り行きでやってしまったようなものである。 これは、生来の“あわてんぼう”の性格ゆえか、後先を考えずに行動してしまった結果である。おかげでしばらくは、資金繰りに苦しむことになるのだが「なんとかなるよ」のお気楽な気持ちでいたところ、お客様に恵まれて、それこそ「なんとかなって」しまった。

 その後も数々のピンチはあったが、ピンチを乗り越えるというよりも、ピンチが知らぬ間に去ってくれたようにも思える。行政書士会の会長選挙に出た時も、やる気は毛頭なかったが「やってください」という周囲の声に乗せられて、ついつい乗ってしまった。本当は50CCの原付バイクぐらいのエンジンなのに、2000CCくらいのエンジンのつもりで、「ぶっ飛ばした!」のかもしれない。挑戦なんかと思ったこともなければ、挑戦すらしたこともない。

 人さまには「挑戦しなさいよ!」と言っておきながら、自分の人生は、常に誰かに“評価”されたいという想い。誰かの眼を意識してカッコつけてきたのである。そう!それは“見栄”ということかもしれない。「その仕事はやったことがないので出来ません」という言葉は言ったことがない。お客様の依頼には、すべて取り組んできた。それは「そんなことも知らないのか?」と言われるのが嫌で、内心は汗だくだが涼しい顔で対処してきた。

 これも見栄っ張りのなせるワザであると思う。その上、欲張り。誰からも評価されたいと思い、カッコつけてきた。そして、この春にまたカッコつけたくなった。桜の咲く季節に新しいスタートを切ってみようと。長年考えてきたリスキリングである。もう一度大学の門をくぐろうかと。

 仕事は、未だ現役。フルタイムで従事しているから、通信制の大学をいくつか探した。「そうだ京都に行こう」というJR東海のキャッチコピーが浮かび、ためらいなく京都の大学に3年次編入の応募をしたところ、入学許可証が送られてきた。

 だから今日から大学3年生である。2年後の桜咲く頃、卒業出来たらカッコいいと思う私である。いざ、出陣!また、カッコつけて。

2024年4月1日

photo by kishimoto

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