柊の花

道端からは水仙の花が「やっと私の季節よ」と声をかけてくる。水仙の声につられて周りを見渡せば、椿の淡い香りが流れ、石蕗の黄色が風に揺られながらも凛とすまして立っている。山茶花の花びらが、あちらこちらと舞っている。暖かな秋が続いていたと思っていたら、急に冷え込んだりする。夜明けは遅くなり、あっという間に陽は暮れる。
いつの間にか12月の声を聞く。誰しもが思うのだろう、「もう12月か・・」と。

しかし、12月と聞けば、季節の移ろいに浸っている場合ではない。なぜなら私たちの仕事の繁忙期であるからである。年を越えて3月の年度末までは、忙しい日々が続く。振り返ってみれば、41回目の繁忙期である。先月1日に事務所開業満40年となったからである。40周年を記念していろいろと考えてみたのだが、コロナウィルス感染症の影響からか何も実施できずに過ぎてしまった。「まあ、40年は中途半端だから更なる50年目指して頑張ろう!」と、言い聞かせるが残念でならない。それにしても、開業当初から考えれば隔世の感である。

書類作りは和文タイプライター、計算は算盤、あとは手書き。コピーは、青焼き(青焼きと言っても判らない人がほとんどだろうけど)。FAXも普及していなかった。FAXが入ったころは、わざわざ電話で「今送りましたが、届きました?」と確認し合ったりしたものである。取引先によっては、まだFAXを導入していない企業も結構あった。こちらにあっても先方に無いなら意味がない。という笑うに笑えないジョークも流行った。

零細な事務所であったが、開業3年目で無理をして、「電子計算機」(パソコンに非ず)を入れた。今では信じられないがデータの蓄積と処理速度に目を見張ったものである。データ保存は何と16インチのフロッピーデスクである(これも読者諸賢には死語に等しいものであろうが)。このフロッピーデスクと和文タイプライターは、今でも事務所の倉庫で眠っている。残念ながら「電子計算機」は、パソコンが出始めたときに、下取りに出してしまった(これも今では考えられないが、当時は下取りがあった)。

それが、今やパソコンが無ければ誰一人仕事ができないどころか、便利なソフトやアプリケーションが有り余るほどあり、すこし勉強すれば仕事ができる時代になってしまった。
実は、ここが私の最大の悩みである。デジタル化が進めば進むほど、私たちの職業の存在価値を問われる状況を迎えようとしている。

如何に私たちの業務に付加価値をつけていくかが大きな課題である。いろいろなことを模索しているが答えはなかなか出てこない。しかし、挑戦者の精神を忘れずに、果敢に攻めていきたい。いかにお客様のニーズにお応えすることができるか。いかに最新の情報をご提供することができるか。いかに“お客様のプラス”をご提案できるか。最近はこのことを考え続けている。今年中に片づけたいが、とてもすぐに“解”は出てこない。

こういう時は、視点を変えてみる。窓を開けて外を見る。小さな敷地の鬼門に植えられている柊に眼が向く。なんと!白い花が咲いている。初めて見る柊の花。多分毎年咲いているのだろうが、全く気付かなかった。如何にものを見ていないかという証拠である。これでは“解”は見つからないだろうと反省する。

しかし、よく見るとトゲトゲのある葉に似合わず可憐な白い花びらをつけている。折角だからと調べてみる。柊の花言葉は“先見の明” “魔除け“とある。特に先見の明とは!まさに言いえて妙である。更に魔除けである。確かにクリスマスのリースや正月飾り、節分等でも魔除けとして飾られている。”先見の明と魔除け“は、すべての人々が願うこと。あらためて、柊の花に掌を合わせる。

今年も皆様のご厚情に感謝申し上げると共に、来る年も皆様にとって、先見の明に満ちた魔除けの年となりますことをご祈念申し上げて今年のブログの筆納とさせていただきます。
令和2年12月1日

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